讃岐といえば、古くから有名なこんぴら参り。長い階段を上り、時間をかけてゆっくり参拝すると、帰る頃にはすっきりとした気持ちに。お土産を買ったり、うどんを食べたりと、賑わう参道に建ち並ぶ商店に立ち寄るのも楽しめますよ。
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目次
”さぬきのこんぴらさん”と親しまれる「金刀比羅宮」
金刀比羅宮は香川県琴平町の象頭山に鎮座する神社です。海の神様を祀り、古くから「さぬきのこんぴらさん」と親しまれてきました。門前町から御本宮までは785段、奥社までの合計は1368段もの長い石の階段があることで有名です。御本宮までは徒歩で往復約1時間、奥社まで行くと、さらに往復1時間がかかるような広さなのです。境内を歩いていると、犬を連れて参拝している人をちらほら見かけることがありますが、こんぴらさんと犬のゆかりは、江戸時代に遡ります。当時、庶民は旅行を禁止されていましたが、神仏への参拝は許されていました。「お伊勢参り」を筆頭に、讃岐の金刀比羅宮と京都の東西本願寺への参拝が庶民の一大イベントでした。とはいえ遠方に住んでいたり、体が不自由だったりする人にとっては、参拝の旅は大変なことでした。そこで、本人に代わって旅慣れた人が代理で参拝に行く「代参」というものがありました。人だけでなく、なんと飼い犬が「代参」することもあったのです。「こんぴら参り」と記した袋を飼い犬の首にかけ、袋の中には、飼い主を記した木札、初穂料、道中の食費などを入れました。犬は、旅人から旅人へと連れられ、街道筋の人々に世話をされ、目的地にたどり着いたといいます。「こんぴら参り」の代参をした犬は、「こんぴら狗(いぬ)」と呼ばれるようになり、今でも金刀比羅宮の象徴のひとつとなっています。
住所 香川県仲多度郡琴平町892-1 TEL 0877-75-2121(金刀比羅宮) URL http://www.konpira.or.jp
鎌倉時代からつづくこんぴら参りのお土産品「加美代飴(かみよあめ)」
石段365段目の大門を抜けると、5つの白い大きな傘の下でそれぞれが販売しているのは「加美代飴」。この販売者は「五人百姓」と呼ばれています。古くから金刀比羅宮の境内で物を売ることを許可されているのは、この5軒しかありませんでした。五人百姓は、金刀比羅宮の神事や祭事で重要な役割を担ってきました。その功労が称えられ、特別に境内での営業を許可されたのです。加美代飴の紙のパッケージを開けると、黄金の小槌とともにおうぎ形のべっこう飴が入っています。飴はこの小槌で叩いて割って食べるのです。そうすることで、こんぴら参りのお土産として、より多くの人に分けて広めてもらえると、かつて考案されました。ほんのり柚子の香りが広がる素朴なべっこう飴。原材料は、砂糖・水飴・柚子油の3つといたってシンプル。こんぴら名物となった「加美代飴」のその歴史は古く、700年も前の鎌倉時代から販売されていたと伝えられています。今でも境内だけでなく、参道に五人百姓の構える商店が残っています。商店には加美代飴をはじめ、さまざまに並ぶこんぴら参りのお土産品が。なかでも池商店では、2021年にリニューアルオープンし、加美代飴を型に流し入れて固める製造風景を店内から窓越しに見学することができるようになりました。
住所 香川県仲多度郡琴平町933番地
(表参道石段69段目)
TEL 0877-75-3694 URL https://www.ikesyouten.com
讃岐一刀彫りの個性豊かなダルマといえば「山中象堂(やまなかぞうどう)」
参道の石段30段目。叩きノミの刀痕をそのまま仕上げに生かす彫法が特徴である香川県の伝統的工芸品、讃岐一刀彫を製作、販売している山中象堂(やまなかぞうどう)。店内にはひょっとこや鬼、お多福などのお面や、ダルマ、お盆などさまざまな彫刻品が並んでいます。讃岐一刀彫の材料となるクスノキの香りが漂い、いい香り。讃岐一刀彫の技法は、1837年の金比羅大権限の旭社建立の時に、全国から集まった宮大工があそびでダルマなどを彫ったのが始まりと伝えられています。店内で一際目立つのが水玉やボーダーなどの模様があしらわれたカラフルなダルマ。3代目の山中竹志さんが彫刻し、4代目の希さんが絵付けをしたPOPダルマです。だいたい、彫刻に1日、絵付けに3日ほどかけて完成するそうです。オーダーメイドで好きな色で好きな柄を入れてもらうことができるものの、全国から注文が殺到し、なんと3年以上先まで予約が入っている状況と言います。これから注文するのは、なかなか難しそうですが、店内でサンプルが展示されているので、一目見ることはできますよ。
住所 香川県仲多度郡琴平町980番地 TEL 0877-73-3009 URL http://zoudou.jp
日本最古の芝居小屋「旧金毘羅大芝居(金丸座)」
1835年に建てられた現存する日本最古の芝居小屋。「金丸座」の名称は明治33年につけられたものです。昭和45年に国の重要文化財として指定され、この時、名称が旧金毘羅大芝居となりました。「旧金毘羅大芝居(金丸座)」で行われる歌舞伎講演「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は、昭和60年から開催され始めました。今でも全国から歌舞伎ファンが訪れ、春を告げる風物詩となっています。残念ながら、今年の春の「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は新型コロナウイルスの影響で中止となりましたが、500円(小・中・高生は別料金)で館内を拝観することはできます。見どころは全て人力で動く舞台装置。旧金毘羅大芝居には江戸時代の芝居小屋の技術が今でも残りつづけているのです。役者の家を表す『定紋』が描かれた提灯が吊される天井には、竹を格子状に組み荒縄でしめられたブドウ棚が設置されています。ここから黒子が客席に向かって、花吹雪を散らす演出ができるのです。また、舞台にある直径7.3メートルのまわし舞台には、奈落に人力でまわす装置が残っていると言います。先人のさまざまな知恵が詰まった仕掛けを知ると、旧金毘羅大芝居の建築そのものが楽しめますよ。
(写真提供:琴平町教育委員会)
住所 香川県仲多度郡琴平町乙1241 TEL 0877-73-3846 URL https://www.konpirakabuki.jp/index.html
昔ながらのほっとする味「浪花堂餅店(なにわどうもちてん)」
参道から少し外れた、琴電琴平駅の近くにある、浪花堂餅店。紺色の暖簾が目印です。浪花堂餅店は明治に創業し、現在は6代目が営んでいます。昔、手押し車にお餅を乗せて商店街まで売り歩いていた4代目は、こんぴらの名物おばあちゃんでした。今でも地元の人に愛されつづけています。名物は五色餅。よもぎ、豆、あわ、白餅、たかきび、と縁起のいい5色で大判のあん餅が1セットになっています。香川県産もち米を使用してついたお餅と、毎日手作業で炊き上げる自家製あんこは素朴でほっとする味。昔ながらの素朴な和菓子だけでなく、変わり種のあん餅パイも人気だそうです。さっくりしたパイ生地に隠れているのは、求肥に包まれたあん。意外にも相性ぴったりなのです。パイのラインナップは桜餅パイ、チーズあん大福パイなど季節によってさまざま。参拝帰りのおやつに買って帰りたくなる場所です。
住所 香川県仲多度郡琴平町603-3 TEL 0877-75-5199
まとめ
金刀比羅宮とともに参道にある商店には、それぞれに長い歴史により紡がれてきた物語が潜んでいて、掘り下げるほどに魅力が浮かび上がってくる場所です。訪れた際にはお店の人とゆっくり話してみると、面白いこぼれ話が聞けるかもしれません。
(文:坊野美絵)
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Drive! NIPPON編集部
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