東京上野にたたずむ明治の文豪・森鴎外ゆかりのホテル「水月ホテル鴎外荘」。敷地内には森鴎外の処女作「舞姫」を執筆した旧居が残されており、東京都内第一号として認められた天然温泉「鴎外温泉」もホテルの名物。全国や世界から森鴎外のファンが訪れ、日帰りでも気軽に利用できる隠れ宿で、静かなひとときを過ごしてみませんか。
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目次
森鴎外が執筆した明治へタイムトリップ
幕末に島根の津和野で生まれた森鴎外は、神童として名高く、東大医学部へ12歳の頃に入学したという逸話があります。19歳で卒業した後、軍医としてドイツに留学。帰国後28歳で結婚し、上野にある妻の持ち家で暮らしたそうです。その旧居を水月ホテルの先代が買い受け、「鴎外荘」として鴎外ゆかりの文化を今に残してきました。「舞姫」を執筆した旧居にある日本間は「舞姫の間」と名付けられ、食事や宴会などが明治の雰囲気の中で楽しめる空間。障子を開くと樹齢300年の木々が彩る日本庭園が広がり、鴎外がふと現れるような気がします。
「現代の名工」がつくり上げる美しい京懐石の数々
総料理長の大河原実氏は、厚生労働省から日本料理の「現代の名工」として認められ、黄綬褒章も受賞しました。大河原氏が手がける料理は、しんとり菜や千住ねぎ、谷中生姜といった「江戸野菜」を生かすなど”地産地消”をベースにした美しい京懐石。館内の「レストラン沙羅の木」や「宴会場」のほか、鴎外荘の「舞姫の間」「蔵の間」「於母影の間」で静かに堪能できるので、隠れ家的な割烹として接待でもよく利用されています。
都内第一号に認定された天然温泉「鴎外温泉」
東京都内の天然温泉として第一号に認定された「鴎外温泉」は、先代が敷地内で掘り当てたもの。茶褐色の重曹泉に浸かれば、体の芯から温まり、すべすべの湯上がり肌が実感できます。古代檜漆浴槽「檜の湯」は樹齢2000年以上の古代檜をくり抜いて柾目の化粧板を施し、丁寧に漆を塗り重ねたもの。漆のなめらかな触り心地にも癒されます。もうひとつの大理石をふんだんに使った「福の湯」も贅沢な空間。都心の名湯で疲れを洗い流しては。
東大受験生から同窓会で集まる方々まで幅広いニーズに対応
2011年にリニューアルした本館と新館はモダンな和室スタイルで、「上野という都心にいるのを忘れ、畳の上で足を伸ばして寛げる」と好評。同館で仲間同士4~5人で同窓会を開いて1部屋に宿泊し、青春時代を語らうご年配のお客様が増えているとか。また、洋室スタイルの東館は、東京大学に近いことや森鴎外の逸話に験を担ぎ受験生の宿泊が多いそう。「朝はおにぎりだけで」「夜は定食で」といった要望にもきめ細かく応えてくれるので、観光、ビジネスユースなど幅広い用途に対応しているのが魅力です。
森鴎外の文化を伝えていくこと、それが私の使命です
女将、中村みさ子さんの転機は40代。「主人がこのホテルの社長に就任したことを機に経理部門を手伝うことに。2年目に『着物を着てお客様に挨拶を』と頼まれて、深く考えずに引き受けました」。それから自然に「女将」と呼ばれるようになり、夫婦で旅館の立て直しに奮闘。「森鴎外についての知識がなかったため、お客様から質問がある度に、当時の東大教授、長谷川泉先生にお電話して助けていただきました」。
専業主婦から女将業に転身した中村さんの迷いが消え去ったのは10年目のこと。「ある講演会で『その仕事を辞めてもいい、と言われた時に寂しいと思うのなら、その仕事が天職です』と聞き、女将業は天職だと覚悟が決まりました。聞き方セミナーで学んだ内容も私を変えてくれ、団体のお客様の前で鴎外の紹介をする際に自信が持てるようになりました」。
大学教授直伝の知識と持ち前の向学心で森鴎外の文化を守る女将。「私の使命は森鴎外の旧居を守り、受け継いでいくことです。でも女将としては『よく眠れた、お料理が美味しかった』が最高の褒め言葉ですね」。穏やかで知的な語り口と、細やかな気配りが印象的な女将でした。
文豪・森鴎外ゆかりの宿 水月ホテル鴎外荘 (2020年5月閉館)
住所/東京都台東区池之端3-3-21
TEL/03-3822-4611
Posted by
Drive! NIPPON編集部
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