江戸時代に創業以来、200余年の歴史を誇る熱海温泉「古屋旅館」。黒澤映画にも登場した「武田信玄屋形門」が出迎えてくれ、熱海七湯のひとつ「清左衛門の湯」の源泉を堪能できる老舗の名旅館です。伝統を継承する一方で、業務のDX化を推進する先手の取り組みが話題に。リモートワークもできるラウンジ、大人の栗スイーツ店といった遊び心に富んだサービスを続々と打ち出している古屋旅館の若女将、内田里絵さんにお話を伺いました。
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目次
熱海七湯「清左衛門の湯」を宿内だけで贅沢に掛け流し
熱海温泉で古来より重要な位置を占めてきた7つの源泉「熱海七湯」。古屋旅館ではそのうちの一つ「清左衛門の湯」の源泉を自家所有し、館内だけで贅沢に使用しています。約90度の源泉を熱交換によって適温に調整しているため、加水加温なしの100%源泉掛け流し。海の温泉地らしい塩化物泉で身体の芯からぽかぽかと温まり、源泉を気に入ってリピーターとなるお客さまもいるそうです。古代ヒノキを使った内湯と天然石の露天風呂を設えた端正な造りの大浴場で、日常の疲れをゆるゆると解いてみませんか。
地魚のお造り、ミルキーな胡麻豆腐。技と創意が光る京風懐石
地元の美味を中心にした厳選食材と、京都や有田から仕入れた器を使い、料理長が腕をふるう京風懐石。洋のエッセンスを巧みに取り入れた月替りの献立は、“古屋懐石”とも言うべき創意にあふれています。先付けとして登場する「丹那の牛乳を使った胡麻豆富」は料理長のスペシャリテで、ミルキーな味わいがやみつきに。伊豆近海でとれる地魚のお造りから土鍋の炊きたてご飯まで品数豊富で、心まですっかり満腹になりそうです。朝食には新鮮なお造りやホクホクの干物といった魚介が並び、目覚めるのが楽しみに。
ブラインドの開閉で露天風呂の爽快感。温泉付きの客室が充実
熱海サンビーチまで徒歩3分という好立地の同館。低層のため海の眺めは望めませんが、その分、喧噪を感じさせない“静寂”に包まれます。数寄屋造の全26室のうち20室が温泉付きで、浴槽の蛇口をひねれば源泉掛け流しの贅沢に浸れるのが幸せ。2021年にリニューアルした半露天風呂付き客室では、電動ブラインドの開閉によって屋外の爽快感を楽しんだり視線を遮ったりと、好みの露天空間を演出できます。ほか、石やヒノキの露天風呂、ベッド付きの和洋室など全客室の雰囲気が異なるので、メンバーに応じて選んでみては。
アロマと心地よいBGMに包まれるロビーでのんびりと読書
200余年という歴史を深く物語るのが「古屋旅館ギャラリー」。日本最古のラジオ、写楽の版画といった貴重な品々が展示され、思わず見入ってしまいます。一方で施設や客室の改築も進み、2022年に宿泊者専用の寛ぎの場「Second Robby 書ヲ読ム旅人」が新登場。熱海産ダイダイのアロマが香る空間にモダンなソファや本棚が置かれ、リラックスにぴったり。カウンター席や防音個室があり、リモートワークやお子さんの宿題にも活用されているそう。チェックアウト後は、古屋旅館が営む熱海銀座のシックなスイーツ店「和栗菓子kiito -生糸-」に立ち寄り、上質なモンブランをぜひどうぞ。
新しいことにワクワク。DX化やスイーツ店にも楽しく挑戦
北海道出身である若女将の内田里絵さんと、熱海の老舗旅館で生まれ育ったご主人とのご縁は、札幌の地から始まります。当時銀行員として札幌に赴任してきたご主人と同僚の紹介で出会い、意気投合。結婚を機に、旅館の若女将という別世界へ飛び込みました。「お付き合い当初から家業を継ぐ覚悟を聞いていましたし、私は楽天的な性格なので『楽しそう』という気持ちが上回りましたね。『一生ものの仕事を続けたい』と考えていたので、今思えば女将業はぴったりでした」とにこやかに語ります。
前職を生かして経理やフロントで働きながら、女将修業も行う多忙な日々。「最初は不規則な休日に戸惑いましたが、若さで乗り切れました(笑)。常連のお客さまが温かく迎えてくれたことがうれしくて、今でも記憶に残っています」と、周囲の支えが励みになったそうです。
7年前に代替わり後は、老舗旅館の革新を進めるご主人をサポート。「20代中心のスタッフたちが輝ける環境を整えるのも私たちの使命です。その一環として、予約システムやオンライン研修のDX化、社員寮の新設を行いました。おかげさまで求人への応募が上がりました」。
2年前には、まちのにぎわい創出のため熱海・銀座通りに栗スイーツ店をオープンするなど、夫婦で歩みを止めません。「新しいことにワクワクする性格なので、女将業や新事業にもすんなり挑戦できたのだと思います。まもなく50代を迎えるので、今までの学びを次の世代に還元していきたいですね」と視線は常に前向き。アクティブなご夫婦の次の一手から目が離せません。
熱海温泉 古屋旅館
住所/静岡県熱海市東海岸町5-24
TEL/0557-81-0001
Posted by
Drive! NIPPON編集部
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