三陸海岸の南端・牡鹿(おしか)半島の西部にある「田代島」は、映画「にゃんこTHE MOVIE」(2006年)やテレビ番組などがきっかけで、一躍有名になった「猫島」。2020年8月現在、住民約50人に対し、猫の数は130~150と推定されています。
猫が多い島は他にもありますが、田代島には「猫を守り、猫に守られてきた共存の歴史」があります。島の人々は昔から「大漁を招く」とされる猫を大切に育て、猫神さまを祀り、東日本大震災の後は「猫の島を助けたい」という全国からの寄付を復興の力としてきました。
ここ数年は海外からの来訪も増え、年間2~4万人もの観光客で賑わっていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛の影響で、今再び静かな島になっています。
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目次
石巻からフェリーに乗り、カモメと戯れながら田代島へ
田代島へは、石巻から「網地島(あじしま)ライン」のフェリーで約40分。乗船場所は、市街地に近い「石巻中央発着所」と、無料駐車場のある「石巻門脇(かどのわき)発着所」の2か所あります。石巻市内の沿岸部は復興工事で道路状況が随時変化していますので、運転には十分お気をつけください。
乗船してしばらく経つと、カモメたちが船を追いかけてきます。優雅に並走したり、餌を差し出す乗船客に猛スピードで接近したり。そんな光景に目を奪われているうちに、最初の港「大泊(おおどまり)」に着きます。島にはもう一つ「仁斗田(にとだ)」という港があります。大泊は猫神社に近く、仁斗田はマンガアイランド寄りですが、2キロほどしか離れていないので、どちらで降りても大差ありません。
フェリーの運航ダイヤは季節によって変わります。また現在は感染症対策で乗船人数を制限しています。事前に網地島ラインのHPでご確認ください。
石巻中央発着所
住所 宮城県石巻市中央1-14-5リバーサイドMOTOMACHI
TEL 0225-93-6125 駐車場 「石巻市かわまち立体駐車場」など近隣に有料駐車場あり 運航ダイヤほか詳細 網地島ラインHP:http://ajishimaline.com/
石巻門脇発着所
住所 宮城県石巻市門脇町3-1-19 駐車場 無料駐車場あり
猫も一緒にまったり休憩。「島のえき」で田代島の海の幸も
田代島は総面積約3平方キロメートルの小さな島。移動は徒歩が基本です。
2016年にオープンした「島のえき」は、島では貴重な休憩処。閉校した田代島小中学校の跡地にあり、猫たちも集まってきて、テラス席や木陰でまったり休んでいます。
建物内では軽食・ドリンク・かき氷などを提供。「弁当の持参もOK」とのことですが、せっかくなので「塩ウニむすびとカキの潮汁セット」(800円)で田代の海の幸を堪能。「その年獲れたウニが無くなり次第終了」ということで、夏から秋限定のメニューです。
猫グッズや田代島オリジナル製品の販売も行っています。
住所 宮城県石巻市田代浜字内山69-2 TEL 080-6015-9346 営業時間 10:00~15:00 定休日 なし
島の暮らしを守り、住民たちに可愛がられた猫を祀った「猫神社」
島のえきの北側、木立に囲まれた静かな場所に、猫神さまを祀った「美與利(みより)大明神」、通称「猫神社」があります。
傍らの案内板には「田代島では、猫は大漁を招く縁起の良い生き物として親しまれてきた。明治末期から大正時代にかけ、島で大謀網漁が盛んだったころ、いかりを作るための砕石作業中に、飛び散った石片が当たって猫に瀕死の重傷を負わせる事故が起きた。当時の総監督が心を痛め、猫の安全と大漁を祈願して祠をたてた」という内容の説明があります。
石巻市のHPには「昔は養蚕が盛んで、ネズミから繭を守る猫が大切にされていた」という記述もあります。
島の猫はかわいいだけでなく、信頼も寄せられていたのですね。
住所 宮城県石巻市田代浜
海風が心地よい「マンガアイランド」。ファンにはたまらないイラストも
島の南側、海を臨む丘にある「マンガアイランド」は石巻市が設置した宿泊施設。ユニークな猫型のロッジ5棟とテントサイトがあります。
ロッジの内外装には、里中満智子先生、ちばてつや先生など名だたる漫画家たちのイラストが描かれています。石巻市産業部観光課に聞くと「これは、漫画をいかしたまちづくり『石巻マンガランド基本構想』への協力を惜しまなかった、宮城県出身の石ノ森章太郎先生とのご縁から生またものです。生前、石ノ森先生が『老後は田代島に住みたい』とおっしゃっていたことに加え、離島振興を目的として、ここにキャンプ場を整備することになりました」と教えてくれました。
海風が心地よく、満天の星空も期待できそうな絶好のキャンプスポットです。
住所 宮城県石巻市田代浜字敷島24 TEL 0225-21-4141(マンガアイランド事務室) 詳細・予約 https://www.umimachi-sanpo.com/plan_item/manga_island/
道を歩けば、そこここに個性豊かな猫たちが。出合いを楽しむ田代の旅
猫たちの暮らしぶりを、東日本大震災からの復興活動に携わる「一般社団法人田代島にゃんこ共和国」理事の渡邉仁悦さんに伺いました。
「猫たちの世話は、集落で猫の好きな人たちが今も続けています。庭先で食事を与えたり、軒下や納屋を開放して休む場所を作ってあげたり。この島ではそういうことが昔から当たり前に行われてきたんですね。私たちも活動の一環としてキャットフードを配っていますが、島の猫はやっぱり魚の方が好きです(笑)。だから食事面は安定していますが、外猫であることに変わりはありません。病気をしたり、カラスに襲われたり、縄張り争いがあったり、そういうことは避けられません。子猫の保護やケガをした猫のケアもしていますが、それはたまたま見つかった猫だけ。島の人と猫の関係はおおらかで自然体です」
旅で訪れる私たちは、その環境を壊さないよう、そっと覗かせていただきましょう。かわいいからと食事やおやつを与えたり、個人の敷地に入ったりするのはNGです。
どこで出合えるかは、訪れてからのお楽しみ。田代島の猫は人懐こくて、道でバッタリ出合っても逃げずにスーッと近寄ってきて、猫好きのハートをわしづかみにしていきます。
まとめ
何かと息の詰まる昨今ですが、たまには、のんびりとした島の空気を吸ってリラックス。猫たちと遊んで笑顔を取り戻しませんか。
「石巻らしいお土産を買いたい」という人は、島から戻って、網地島ライン石巻中央発着所に近い「いしのまき元気いちば」(http://genki-ishinomaki.com/)でどうぞ。旬の魚介や農産物、水産加工品などが幅広くそろっています。
(文:早坂 泉)
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Drive! NIPPON編集部
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